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あ、うさぎがいる。
店を出ていきなり言った彼の言葉に疑問を感じて俺は振り返った。
すると彼は空を見上げていた。
・・・・・・うさぎ?
「ねぇほらうさぎがいるー」
いつもより舌足らずな感じで喋る彼。
今日は珍しいもので、下戸な彼が自分から酒を頼んだ。
まぁ、大した量は飲んでいないが完全にほろ酔い加減らしい。
とろん、とした瞳で空を見ながらなおも彼は「うさぎ」と言っていた。
「うさぎ?どこに?」
こいつ大丈夫なんだろうか、いや、まさか自分から酒を飲むなんてその事自体オカシイのだが。
そんな事を考えながら俺は相槌を打つ。
あそこ。と彼が指差したのは空にぽっかりと浮かんだ月。
今は冬なので空気が澄んでいて月も綺麗に見えた。
「ほら、うさぎがいるようにみえない?」
にこにこと彼が俺にきいてくる。
いや、すごく、すごく賛同したいのだが。
「・・・・・どこら辺が?」
「えー、なんだよー何で見えないのー?」
ほら、ここが耳でしょー。
んでここが足でー。
変わらず舌足らずに喋る彼。
すると今までとは違うトーンでぽつりと呟いた。
「・・・・つきっておいしいもんあるのかな・・・」
何だそれ。お前の頭の中は食いモンの事しか頭にねぇのかよ。
そんなツッコミをかましてやりたいような発言だが生憎そんな言葉とは裏腹にぽつりと呟く彼の横顔があまりにも儚くて、それはそれは、もう。
本当に月にでも行ってしまいそうな感じだったから。
「お前は月に行っちゃ駄目なんだよ。」
「え?」
月を恋しがる兎のような彼に言う。
「お前は、まだやる事たくさんあるだろ?」
「・・・。」
「まだ月に行っちゃ駄目だ。」
「・・・・うん。」
安心したように笑う彼に、俺も一安心。
さぁ帰ろう、とまた歩き出した彼について行く。
最後にこっそり、月を見上げて。
どうか彼の不安を綺麗に流してやってくれ、と月の兎に願った。
当たり前の事を言おう
愛する事は美しい。(だがリスクが大きい)
信じる事は清きこと。(自分不信だとしても)
嫌うだなんて悲しい。(しかしそれで世界は救われる)
怨みなんて持つべきではない。(頭では分かる)
優しさを分けなさい。(どうやって?)
人の心を理解しなさい。(自分の心も分からないけれど)
善悪を判断しなさい。(判断した上で悪を選ぶ)
素直になりなさい。(自分の意思など関係無く?)
裏切りなんてしてはいけない。(裏切るつもりは、なかったの)
弱いものいじめはするな。(強い者を、いじめたい)
笑顔を絶やさずにいなさい。(仮面の下は涙でべちょべちょ)
欲望を抑えなさい。(いつか、爆発するかも)
皆さん、分かりましたか?
はい、先生。
結局幸せな生き方なんてこの世には無いのですね。
失くしたものは、必要なものですか?
本当に、貴方が欲しいものですか?
実際は、要らないものではありませんか?
欲しがってばかりいて、必要なものを捨てていませんか?
欲があるのは、キタナイですか?
無心がそんなに素晴らしいですか?
生き方を決めるにはまだ早すぎやしませんか?
絶望も希望も、捨ててしまえと思いますか?
本当は、貴方は何が欲しいのですか?
そんなに急かさないでよ。
焦ったって何にもならないわ。
どっちにしろもうすぐ終わるのよ。
何をそんなに急ぐ必要があるの?
いつから待っていただろう。
この瞬間を。
いつから想い焦がれていただろう。
破滅の瞬間を。
一度は誰でも訊かれたことがあるでしょう?
『もし明日世界が終わるとしたら貴方は一体何をしますか?』って。
その度に私はこう答えるの。
「そうね、ただ早く世界が終わるのを待つわ」。
破滅、とか
終わり、とか
マイナスイメージしかないみたいだけれど
私はそうは思わない。
だって、まだ私達は世界の終わりを知らないのよ。
なのに、どうして嫌がるの?
世界の終わりってどこなのだろう。
消滅?ブラックホールに呑み込まれる?
・・・・いいえ、きっと。
きっと今が世界の終わりの状態なのだわ。
この現状が、終わってるのよ。
でも、もし本当に世界が消滅するならば。
この想いだけは忘れずに消えたい。
あの人に届かなくてもかまわないの。
ずっと、憧れてました、なんて言えなくてかまわないの。
地球最期の日。
私の最後の時間は、きっと幸せな想いで溢れるわね。
ねぇ泣かないで。
なんで泣いてるの?
俺、何かしたかなぁ。
ごめんね、ごめんね、おねがい、泣かないで。
「お前の、せいじゃないよ。」
にこり、と笑ってくれたけど。
ちがう、ちがうよ。
その笑顔は、いつもの笑顔じゃないんだ。
おねがい、笑って。
笑顔をみせて。いつもの。
「どうして、お前が泣くの。」
泣いてないよ、と言おうとしたけど
俺の口から出たのは嗚咽だけで。
目からは水滴が零れてて。
わらってよ、おねがい。ごめんなさい。なかないで。
「ほら、もう、泣かないの、ね?」
そう言って俺の涙を拭って頭を撫でてくれた人は
もう、泣いてはいなかったから。
だから俺ももう泣かないんだ。
「お前は泣く事も多いけど、泣き止むのも早いよね。」
そう言ってさっきまで悲しそうだった人は
いつもの笑顔を俺にみせてくれた。
ほら、やっぱり笑顔の方が格好良い。
今、俺の涙を拭ってくれた人は変わらぬ笑顔で、そして変わらず俺の憧れとして立っています。
そしてそれはこれからも変わらないでしょう!
未だにあの時の彼の涙の理由は分からないけれど、もういいんだ。
だって今の彼はとても格好良い!
でも、もしもまたあの時のような事が起こったら
次は泣かないで、俺の笑顔を分けてあげたいと、思います。
ねぇ、俺でもアナタの役に立ってるでしょう?